経営指標とは何ですか?

貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書といった財務諸表とは別に「経営指標」や「財務指標」というツールがあります。これは財務諸表に記載されている数字から算出される様々な数値で、経営状態や財務状況を様々な角度から分析するツールです。

経営者は経営指標を知っておくべきですか?

正しい経営判断をするには、自社の財務状況を正確に分析し、現状把握をしなければなりません。分析の対象には、市場・需要の動向や自社の販売力の状態、競合他社の商品や販売戦略などに加え、自社の財務内容があります。

経営戦略や経営計画を立てても、財務状況に見合った戦略・計画でなければ実行できませんので、まずは財務状況の把握が不可欠となります。財務状況を知るための分析手法の数値が経営指標や財務指標です。

ある調査によると、基礎的な経営指標を算出している企業は約50%しかありません。業績の悪化している企業の中では40%を下回ります。経営がうまくいっていない企業では、経営指標を把握していないケースが多いということを示しています。

経営指標・財務指標はたくさんあり、全てを把握することは困難です。ここでは、「効率性」「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」の五つの観点に分けて指標を紹介します。

効率性をはかる指標

事業の効率性をはかる指標として、「売上高総利益率」や「売上高営業利益率」があります。売上高の何%が売上総利益(粗利)や営業利益(本業による利益)として残ったかを示す数値で、これらの数値が高い方が効率のよい経営ということになります。

【公式】売上高総利益率(%) =売上総利益÷ 売上高×100

売上総利益(売上高-売上原価)は商品力を反映すると言われます。それを売上高で割った売上高総利益率が高ければ、取り扱っている商品・製品の収益性が高いということになります。

【公式】売上高営業利益率(%) = 営業利益÷ 売上高×100

営業利益(売上総利益から販売費や一般管理費を差し引いた数値)は営業力を反映します。例えば、A社の売上が1億円で営業利益が2000万円、B社の売上は同じ1億円で営業収益は3000万円だったとします。この場合、売上高営業利益率は、A社20%、B社30%で、B社の方が効率よく稼いでいるということになります。逆に、A社は同じ営業利益を得るためにB社より経費が多くかかっていることを示します。

収益力をはかる指標

資本利益率(利益を資本で割った数値)という指標があります。投下した資本とそれによって得られた利益との関係で収益力をはかる指標で、①総資本経常利益率 ②経営資本営業利益率 ③自己資本当期純利益率などがあります。ここでは①と③について紹介します。

【公式】総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本×100

総資本経常利益率(ROA:Return On Assets)は経営分析に使われる代表的な指標です。総資本(総資産)をいかに有効に活用して利益を上げているかを示し、株主資本だけでなく負債総額についても考慮しています。「総資本」とは損益計算書の「負債・純資産合計」=「資産合計」です。総資本経常利益率は、元手(総資本)に対してどれだけの経常利益を得ることができたかという指標で、この数値が高いほど収益性が高いということです。

総資本経常利益率は、会社が調達・運用しているすべての資本をもとに、財務活動を含む正常な経営活動から得られる「経常利益」をどれぐらい稼ぎ出したかを示しており、経営状態を表す総合指標と言われています。

総資本経常利益率の適正値は5%前後と言われています。しかし、仮に総資本経常利益率が1%未満であれば、元手(資本)をほとんど増やせていないということです。総資本を銀行に預けた場合の利息より総資本経常利益率が低い場合、資本を増やす(利益を生み出す)という点においては、会社を経営する意味がないということになります。ただ、すべての経営指標にいえることですが、適正値は業種や会社の規模によっても違ってきます。

【公式】自己資本当期純利益率(%)=当期純利益÷自己資本×100

自己資本当期純利益率(ROE:Return On Equity)は自己資本に対する当期純利益の割合を示し、株主の視点からの収益分析に役立ちます。株主の出資(株主資本)から配当(=出資への見返り)の原資となる当期純利益をどれだけ稼ぎ出したかを示す数値です。投資価値を判断する際に重視される指標の一つです。

安全性をはかる指標

会社の資金調達の安定度や、資金調達と運用のバランスを分析することで会社の支払能力を把握し、倒産の危険性の有無(会社の安全性)を判断することができます。収益性の高い企業は財務内容もよく、支払能力も高いのが一般ですが、利益を上げながら倒産するケースもあります。収益性を追求するあまり財務内容が悪化し、支払能力が低下してしまうと、債務(支払手形や借入金)の返済ができなくなるからです。こうした倒産を免れるには、資金繰りを管理する必要があります。

【公式】自己資本比率(%)= 自己資本÷ 総資本×100

自己資本比率は貸借対照表の「自己資本」(株主資本)を「総資本」(負債・純資産合計=資産合計)で割ったもので、総資本に占める自己資本の割合です。自己資本には返済義務がないため、自己資本比率が高ければ、資本調達の安全性が高いということになります。

自己資本比率は収益性にも大きく影響します。自己資本の割合が大きければ借入金の割合が小さいことになり、金利負担が少なくて済むからです。また、自己資本には、会社に最終的に残った利益が組み込まれていきますので、純利益が多い(=会社がもうかっている)と自己資本が増え、自己資本比率もさらに高くなっていきます。逆に、赤字が続き自己資本を食いつぶすと、債務超過の状態になります。

【公式】固定比率(%)= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

固定比率は自己資本に対する固定資産の割合を示します。A社で5億円の自己資本に対し固定資産が10億円であれば、固定比率は200%であり、B社で15億円の自己資本に対し固定資産が10億円であれば、固定比率は約67%となります。同じ10億円の固定資産を得るにも、A社は半分を借金でまかない、B社は全額を自己資本で支払ったうえ、5億円余っていますから、B社の方が財務状態がよいということになります。つまり、固定比率が低いほど、その会社の安全性は高いと言えます。固定比率100%以下であることが望ましいとされていますが、業種によって違いますので、注意が必要です。

【公式】流動比率(%)= 流動資産÷流動負債×100

短期的な返済能力を診断する指標の代表的なものが流動比率です。これは、1年以内に資金化できる「流動資産」と1年以内に返済しなければならない「流動負債」の割合を示す数値です。流動資産は「現金・預金」「受取手形」「売掛金」などの当座資産と「棚卸資産」を合計したもの、流動負債は「支払手形」「買掛金」「短期借入金」などの合計です。A、B社とも流動資産を50億円ずつ持っているとします。これに対し、A社の流動負債が40億円(→流動比率125%)、B社の流動負債が25億円(→流動比率200%)であれば、B社の方が返済に余裕があります。つまり、流動比率が高いほど短期的支払能力が高い(手元の運転資金が多く、債務返済能力が高い)ということになります。

流動比率は200%以上が望ましいとされていますが、銀行との結びつきが強い日本の大企業では130%前後が多いそうです。流動比率が100%を切ると、キャッシュフローがショートする可能性が大きく、新たな資金調達が必要となってきます

生産性をはかる指標

生産性をはかる指標には労働分配率や労働生産性があります。従業員にかかるコストと利益との相関に着目した指標です。

【公式】労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100

労働分配率とは、付加価値のうち人件費の占める割合をいいます。 「付加価値」とは、企業が生産・販売等によって生み出した利益で、売上から変動費を引いた「限界利益」のことですが、ここでは損益計算書の「売上総利益」とほぼ同じと考えて差し支えありません。人件費は、「給与」のほか、社会保険料や雇用保険料といった「法定福利費」や「厚生費」を加えた額です。この比率を知ることで人件費に問題がないかどうかが分かります。

労働分配率が低いほど、労働力を効率的に活用している(=労働効率がよい)ことになります。労働分配率は通常40~60%程度だと言われています。ただ、労働分配率が大きいことが必ずしも悪いわけではありません。業種や企業規模などに応じた適切な労働比率を目指すことが大切です。

【公式】労働生産性(%)=付加価値額÷従業員数(2期平均)×100

労働生産性は従業員1人当たりの付加価値額(=売上総利益とほぼ同じ)です。この数値が高いほど、効率よく利益を生み出していることになります。同業他社や自社の過去実績と比べて自社の適正値を把握し、それよりも数値が低ければ、商品力はもちろん、従業員の意欲・モチベーション、生産設備、販売システムなどを見直すことも必要です。

成長性をはかる指標

成長性をはかる指標には以下のようなものがあります。

【公式】売上高増加率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

前期の売上高に対してどれほど増収があったかという数値が売上高増加率(増収率)です。企業の勢いを示しますが、企業規模が大きいほど売上高増加率は小さくなる傾向があります。同業他社や自社の過去実績との比較が有効です。

【公式】利益増加率(%)=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100

利益増加率のうち正常収益力の成長性、つまり企業の実力の伸びを示します。本業の成長性であれば「営業利益」を、長期に渡る成長性であれば「当期純利益」を用います。

会計を解らずに経営はできない

京セラの稲盛名誉会長は、「会計を解らずに経営はできるか?」と言われています。月次決算書は、月初にまとめて分析する。その結果内がどうなっているのかを紐解き、今月の改善策を指示する。当たり前のことですが、できている会社がほとんどない。
こうも言っています。
決算書を見ていると、数字が語りかけてくれる。こちらから、おかしなところを探すのではなく、習慣化してくると、前月に比べて今月は改善されているというようなことは、数字が語りかけてくれるようになる。また、そうならなければいけない。

経営者の中には、数字を苦手とする方もおられるでしょうが、それでは企業は発展しません。数字菜慣れ親しむことが必要です。

まとめ

正しい経営判断をするには、自社の財務状況を正確に把握しなければなりません。それを知るための分析手法や数値が経営指標や財務指標です。ここでは、「効率性」「収益性」「安全性」「生産性」「成長性」の観点から指標を紹介しました。

1.効率性をはかる指標

・売上高総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100
・売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

2.収益力をはかる指標

・総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本×100
・自己資本当期純利益率(%)=当期純利益÷自己資本×100

3.安全性をはかる指標

・自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100
・固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100
・流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

4.生産性をはかる指標

・労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100
・労働生産性(%)=付加価値額÷従業員数(2期平均)×100

5.成長性をはかる指標

・売上高増加率(%)=(当期売上高 - 前期売上高)÷ 前期売上高×100
・利益増加率(%)=(当期経常利益 - 前期経常利益)÷前期経常利益×100

自社のこうした財務指標・経営指標をまず把握し、同業他社や自社の過去の数値と比べて経営の状態を判断し、今後の経営戦略に反映させていくことが大事です。