フィロソフィーとは何ですか?

「フィロソフィー」とは、直訳すると「哲学」のことで、人の考え方や倫理観、人生の行動原則など広い意味で用いられることもあります。また、企業経営とからめてフィロソフィーという言葉を使う場合は、「経営哲学」や「経営理念/企業理念」を指します。人生をよりよく生きる上でフィロソフィーは大事です。信念や目標のある人は強いですし、指針を持って生きる方が励みになり、自身の向上と成果につながります。

企業の場合も同じです。適切な企業理念を策定しそれを社員に浸透させれば、従業員一人一人の意識や行動も変わり、組織は同じ方向に向かって進みます。そして、よりよい商品やサービスを提供できるようになります。そして、理念が社会に支持されれば企業イメージの向上につながり、社員の誇りにもなり、商品・サービス以外の面でも企業の力が上がっていきます。

稲盛和夫氏は、経営破綻した日本航空の会長に就任後、「JALフィロソフィ」を策定させ、社内に浸透させました。これが日本航空の体質を変え、再建の成功を支えました。稲盛氏にとって「フィロソフィ」とは自身の創業した京セラを育てた経営哲学であり、「人間として何が正しいのか」、「人間は何のために生きるのか」という根本的な問いに向き合いながら困難を克服していく中で学んだ、人生や仕事の指針です。つまり、自分が正しいと信じる生き方のことであり、そのような生き方をすれば、従業員一人一人も幸福になり会社全体も繁栄すると、稲盛氏は説いています。

フィロソフィーは人生に必要ですか?

稲盛和夫氏の人生哲学を盛り込んだ「京セラフィロソフィ」は、「すばらしい人生を送る」「より良い仕事をする」「リーダーとして大切なこと」「心を高める、経営を伸ばす」「新しいことを成し遂げる」などの項目に分類されています。

これらは稲盛氏自身の人生哲学を従業員に示し、規範として掲げたものです。人生哲学は人それぞれであり、価値観も生き方も分かれます。ただ、京セラという大企業を生み育て、日本航空再建にも成功した稲盛氏の人生哲学であれば、他の人にとっても、人生を生きる上でも企業を経営する上でも大きな教訓になることでしょう。

稲盛氏に限らず、著名な経営者の多くはそれぞれの人生訓やポリシーを企業理念や経営哲学に反映させてきました。そして、経営者自身がそうした人生哲学や経営哲学を日々の仕事や生活の中で実践し、失敗や困難を乗り越えて成功に結びつけてきました。成功者の多くがフィロソフィーを持って生活し、経営や仕事にも取り組んできたことを考えると、フィロソフィーは人生をより実り多く生きるためにも仕事で成功するためにも有用なものと言えるでしょう。

経営者や政治家など多くの著名人が自身の生き方や考え方を本にして出版しています。考え方や価値観は人それぞれなので、著名人が書いているからといってその内容をうのみにする必要はありません。しかし、こうした著作の中には、成功体験に裏付けられた考え方や法則がふんだんに紹介されています。それらを学び、自分の価値観や到達段階に応じて内容を取捨選択し、自身のフィロソフィー(人生哲学)を形成する際の参考にすれば、成功者に近付く早道になります。

自身のフィロソフィーを定める際に頭に留めておきたいことがあります。それは、他人や社会とどう関わるかという観点です。例えば、稲盛氏は「人生の目的は魂を高めること」と説いています。「魂を高める」と言うと難しいように思いますが、「心を高める」と置き換えてもよいでしょう。

他人や社会とよりよく関わろうとする中で自分を変え心を高めることができます。そして、心を高めようと思って生きる人が増えると、相互を思いやり助け合う機運が社会に広がっていきます。「成功」や「勝ち負け」といった種類の価値観だけではなく、「美徳」など人格に関わる価値観を併せ持てば、バランスのとれた人格になっていき、周囲にもよい影響を与えることができるのではないでしょうか。

フォロソフィーは経営に必要ですか?

このように、多くの企業がフィロソフィーにあたるものとして「企業理念」や「経営理念」などを掲げています。そこには、顧客や取引先に対する企業の姿勢や社会との関わり方、あるいは従業員向けの行動規範などが盛り込まれています。欧米では、ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Value)の三要素で構成されることが多いそうです。

こうした企業理念を掲げることでどのような効果があるのでしょうか。一つは企業の目的や経営の方針を示し、外に向かっては企業PRやメッセージを発信します。これによって企業のイメージやブランド力を高める効果も期待できます。また、社内に向けては、経営者だけでなく従業員にも目標となるような考え方や行動基準を示し、企業文化を醸成していくことに役立ちます。企業理念が浸透すると、目指す方向や価値観を従業員が共有し、同じ方向を向いて仕事をすることができます。そういう組織は強くなります。また、人間としての生き方や社会への関与の仕方を盛り込んだ高尚な企業理念があると、社員が自分の会社に誇りを持ったり、働く意欲が高まったりすることもあります。

あるべき人間関係や周囲への配慮を社内向けに示すことで職場環境がよくなることもあります。品質やサービスに関するメッセージを盛り込むと、従業員の意識や意欲が高まり、実際に品質・サービスの向上につながるケースもあります。

スターバックスの店舗で、スタッフ間の雰囲気がよいように見受けられるのは、ミッションの冒頭に「お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる」と盛り込まれ、それが従業員に浸透していることの現れかもしれません。

このように、企業理念は企業活動にとって非常に有益です。良い理念を掲げて実践すれば、企業の力が増すという実例が多数見られます。

フォロソフィーを社員に浸透させるには

それでは、企業理念や企業フィロソフィーを社内に浸透させるにはどうしたらよいのでしょうか。それには、フィロソフィーをまずリーダーに浸透させることが大事です。フィロソフィーに対する各職場の所属長などリーダーの取り組み方や言動によって、その職場のメンバーがフィロソフィーに向き合う姿勢も変わってきます。

そして、リーダーにフィロソフィーを浸透させるには、幹部向けの研修を行うことが有効とされています。あるいは、所属長人事を工夫するという手法も併用できます。もちろん、リーダーを教育する前に経営陣が企業理念を深く理解し実践しなければなりません。役員向けの研修を頻繁に行い、役員の意識向上を徹底している会社もあります。

JTBモチベーションズが2012年に発表した「企業理念の浸透と社員のパフォーマンス」に関する調査によると、企業理念を社員が理解したり覚えたりするには、「朝礼や会議等で企業理念を唱和すること」や「社員研修」が効果的と考える人がたくさんいました。

また、企業理念に沿った行動をとっている人に多かった人たちは「直属の上司が企業理念や行動指針を大切にしている」「同僚や先輩社員が企業理念や行動指針を大切にしている」「自分の意見が職場や組織の運営に反映されている」「自社は社会に貢献する仕事をしたり、取り組みをしたりしている」と回答する傾向が高かったそうです。

※参照 https://www.value-press.com/pressrelease/101633

「JALフィロソフィ」の浸透過程も参考になります。JALフィロソフィが社内向けに公開されたのは、経営破綻から1年後の2011年1月で、まず「JALフィロソフィ手帳」として全社員に配布されました。

その際、会社は上司からの手渡しと読む機会の設定を各職場に指示しました。これを受けて、人事本部では、毎週月曜日の朝に社員が持ち回りでJALフィロソフィの読み合わせを始めました。3カ月後、「JALフィロソフィ教育」が始まりました。年に4回、2時間ずつ社員に教育するのですが、社員の中にファシリテイターを指名し、プログラムの策定や進行を任せました。ファシリテイターたちは準備段階で講義内容について話し合う中で「JALフィロソフィ」への理解を深めました。そして、講義では、職場で同じ立場のファシリテイターがフィロソフィーを語ることで、受講者たちも理解を深めていったそうです。

こうして「JALフィロソフィ」が浸透するにつれ、例えば、パイロットが燃油の効率的な使用を心がけるようになりました。それまでは、コストを意識することなく余分に燃料を積んでいましたが、採算意識が高まり、燃油の無駄をなくせるように飛行計画を立てるようになったそうです。

また、「JALフィロソフィ教育」で職場の垣根を越えて受講する中で縦割り意識が改善されるという効果もありました。例えば、出発前に飛行機の部品交換が必要になったケースで、従来は整備担当だけが焦り、周りは傍観していたのが、ゲートで待つ客に機内から飲み物を配るなどの連携が生まれました。整備担当の側も、客への説明をゲートのスタッフだけに任せきりにせず、自分で具体的に説明するようになり、客も納得しやすくなるという流れもできました。機内アナウンスについても、感謝の気持ちを自分なりに表現したいと、マニュアルの枠を越えて自分の言葉で話すパイロットも現れたそうです。

よい企業理念ができ、社員にしっかり理解させると、社員の意識や行動が変わるという劇的な事例を「JALフィロソフィ」に見ることができます。

まとめ

人生をより生きる上でフィロソフィーは大事です。多くの成功者がフィロソフィーを抱いて生きてきました。しっかりした信念や行動指針を持っている人は芯が強く、ぶれません。

また、指針を持って生きると、目標やほどよい緊張感が生まれ、心の向上とより多くの成果につながります。企業も同じで、適切な企業理念をつくって経営陣にも社員にも浸透させれば、一人一人の意識や行動を高め、ひいては商品やサービスを向上させることができます。

よい企業理念は社員のモチベーションを高め、組織の一体性や一体感も醸成します。社会へのメッセージとなり、企業イメージの向上やブランド価値の創造にもつながります。

松下幸之助さんは「会社経営の成否の50%は経営理念の浸透度で決まり、30%は社員のやる気を引き出す仕組み作りで決まる。戦略戦術は残りのわずか20%である」と説いています。人生においても企業経営においても最良のフィロソフィーを持ち、それを実践していきたいものです。