顧客第一主義

顧客第一主義と絶賛されたスターフライヤーCAの対応

顧客第一主義とはこのようなことを言うのでしょうか?

スターフライヤーのキャビンアテンダント(CA)の顧客対応が「神対応」と絶賛されているのを先日、FB(フェイスブック)で読みました。

投稿者は、お母さんの七回忌で帰省する際、遺影と位牌を大きな袋に入れてスターフライヤー機に搭乗。バッグを座席上部の収納棚に入れ、遺影・位牌の入った袋を手で抱えて座っていたそうです。すると、離陸前にCAさんから袋を収納棚か足元に移すように言われました。投稿者はこれに対し、遺影なので抱えて持っていたいと言ったそうです。

すると、CAさんは「大変失礼なことをお願いしてしまい、申し訳ございませんでした」と謝って去り、しばらくすると、別のCAさんがやって来てこう言いました。

「お客様、この度はお悔やみ申し上げます。先程は大変失礼なお願いをしてしまって、申し訳ございませんでした。もしよろしければ、隣のお席が空いておりますので、お客様にも座席に座って景色をご覧になって頂いてはいかがでしょう?その際にシートベルトを袋の取手にかけて固定させて頂きますが、よろしければ隣でごゆっくりフライトをお楽しみ下さい」

こうして、投稿者のお母さんの遺影はCAから「お客様」と呼んでもらい、隣の席でフライトを楽しむことができたということです。

投稿は「スターフライヤーのCAさん、素敵な対応をして下さってありがとうございました。一生忘れない暖かい心遣いのおかげで、穏やかな気持ちで(七回忌を)迎えられそうです。これからもずっとスターフライヤーを利用します!ありがとうございました!」と深い感謝でしめくくられています。

心温まるエピソードですね(^_^)d 投稿内容が事実だとすれば、このCAさんたちの対応は素晴らしいと言うほかなく、顧客の思いやハートを大切にする姿勢の好例ですね。

筆者も受けた「神対応」

搭乗口に携帯を置き忘れる

スターフライヤーのCAさんの「神対応」。でも、ひょっとしたらまゆつばかなと少し身構えたくなる人もいるかも知れません。しかし、実は私も数ヶ月前、JALのCAさんから「神対応」を受けました。

その日、私は遠方の友人に会うために朝一番の便で羽田から長崎に向かっていました。離陸して20分前後経ち、携帯電話を飛行機モードにしていなかったことに気付いてポケットを探しました。しかし、そこに携帯電話はありませんでした。座席回りにも見つからず、収納棚を空けてキャリーバッグを降ろし、空いた席で開けて中を探しましたが、それでも見つかりません。そういえば、携帯電話の充電器も荷物の中にありませんでした。

そこに至って思い出したのですが、そういえば、搭乗前、搭乗ゲートのPCカウンターに電源コンセントがあったので、充電器のコードを差し込んで携帯電話の充電をしました。わずか十数分間のことでしたが、充電を始めて椅子に座ると、たまたま同じ便に乗り合わせることになった東京の友人がゲートに現れ、「同じ便なの? わあ、奇遇だね!」ということになり、話し込んでしまったのです。相手は女性で、話し好き。搭乗ぎりぎりまでおしゃべりを楽しみました。

搭乗開始のアナウンスが流れ、乗客の列が機内へと流れ始めました。私はキャリーバッグとブリーフケース、さらには長崎の友人に渡す手土産まで持っていたため、搭乗が遅くなると、座席近くにこれらの荷物を収納するスペースを確保出来なくなると思い、あわてて荷物をまとめました。その際、焦りで気もそぞろとなり、カウンター上の充電器とそれにつなげていた携帯電話をもろとも放置したまま搭乗してしまったのです。

最初は残念対応(^_^);

機内で手荷物を点検しながらそのことに気付き、CAさんを呼んで話しました。かくかくしかじかで、搭乗口のPCカウンターに携帯電話と充電器を置きっぱなしにしてきたみたいなので、現物を確保するために地上と連絡を取れないかと。

すると、CAさんは「長崎空港にJALの忘れ物窓口がありますので、着陸後にそこに届け出てください」との返答。親身な様子で説明を聞いてくれた割には拍子抜けする返答で、「着陸までまだ1時間以上あり、置き忘れた携帯電話をこのまま放置すると、誰かに持ち去られかねない」という懸念がありました。

その先に素晴らしい対応が

私の旅程は1泊2日。旅先で会う予定の友人と連絡を取り合うのも、休日でもおかまいなしにかかってくる仕事関係の電話も、家族との連絡も、すべてこの携帯がなければ成り立ちません。それに、一刻も早く携帯を羽田のJAL関係者に確保してもらわないと、通行人に持ち去られてしまう可能性があります。

CAさんに「長崎空港で窓口に届けるのは了解だが、携帯は今、羽田のPCカウンターに置きっぱなしになっている。放置するとだれかに持ち去られる可能性もある。羽田にはJALの従業員さんがいるだろうから、可能であれば、機中からから地上(羽田)に連絡して、1分でも2分でも早くこれを確保してもらえないだろうか」とお願いしてみました。

このCAさんの手に余ったのでしょう。神妙な顔をして「少しお待ちください」と行って向こうに行きました。

数分経ってやって来たのは、最初のCAさんより少し年配のCAさん。その機のCAの統括だといいます。「羽田の担当者に連絡出来るか、やってみますので、少しお待ちください」と願っていた返答。しかし、その後少し経って再びやって来て、「羽田に連絡を試みていますが、現在のところうまくいっておりません。連絡が付き次第、携帯電話の確認をさせて頂きます。それまでお待ちください」とのことでした。

気持ちは落ち着きませんが、そこまで対応して頂いたら、後は待つしかありません。長崎までの残り1時間余り、CAさんから新しい情報はないかとじりじりした思いで待ち続けました。

ついに忘れ物確保!

CAさんの対応には誠意を感じたものの、結局、着陸まで追加連絡はありませんでした。着陸後にしっかり連絡を取ってもらって後は運に任せるしかない。そう思いながら降りる準備をしていると、最初のCAさんが私に歩み寄り「お降りになる前に先ほどのCAから携帯電話のことでお知らせがあります」とささやきます。

何か進展があったのだろうか。期待に胸ふくらませて出入口に近付くと、統括役のCAさんが「お客様、携帯電話が見つかり、確保させて頂きました。お知らせが遅くなり申し訳ございませんでした。長崎空港内の窓口にも連絡がいっておりますので、お受け取りの方法はそちらでご相談ください」と知らせてくれました。

携帯が見つかりました! 長崎着陸の前後に羽田と連絡がとれ、羽田の搭乗口に置き忘れた携帯電話をJAL関係者の方が確保してくださったのです。まずはひと安心。ビジネスマンにとって携帯は仕事に不可欠なもの。取りあえず確保できたと聞き、一気に安堵し、心が晴れました。

その日のうちに受け渡し

空港の対応カウンターでは、私が翌日夜に東京に帰る際に受け取りをと最初は指示されましたが、「それ(携帯電話)がないと長崎滞在中に所用をこなせない」と交渉し、次に羽田から長崎に来る便で届けて頂くことになりました。空港のスターバックス・コーヒーでパソコンをたたいて待ち、約2時間半後に携帯を再び手にすることができました。JAL関係者の皆さま、本当にありがとうございました。

顧客第一主義の背景には何が?

顧客の思いを第一に

CAさんの話が2本続きましたが、いずれも顧客第一主義を地でいく対応です。CAの接客は航空会社の競争力を規定する大きな要因の一つですから、特にベテランのCAさんは鍛え抜かれた接客のプロに違いありません。

しかし、研修やマニュアルによる対応のノウハウもあるかとは思いますが、それだけではないような気がします。スターフライヤーのCAさんにしろJALのCAさんにしろ、心がこもっていなければ、私たち乗客をこれほど感動させることはできません。

従業員が顧客の身になって対応し、顧客の満足をつかむ。もちろん、まずは従業員さんたちが素晴らしいのですが、その背景には、経営者や会社、あるいはこうした方々の職場にも、顧客の思いを第一に考えるなにがしかのDNAが備わっているのではないか。そんな気がします。

顧客第一主義の理念が信用に

顧客第一主義は今や企業理念の標準モードともいえ、大きな企業で顧客第一主義を掲げない企業はあまりありません。例えば、世界のトヨタ自動車は、「お客様第一」「品質第一」に対する基本的な考え方――というタイトルで、「品質は、開発・設計、調達、生産、販売、アフターサービス活動などの連携から作り出されます。 トヨタでは、『製品』の質、『営業・サービス』の質、それを支える基盤として従業員一人ひとりの『仕事』の質があり、この3つが一体となったものが品質であり、これが確保されて初めて、お客様の信頼に応え得る製品・サービスになると考えています」と説明しています。

トヨタの製品が顧客から長年にわたり絶大な支持を受け続けている事実は、トヨタという会社の理念や従業員教育が品質や顧客対応を通じて顧客の満足につながり、顧客が喜ぶビジネス、つまり顧客第一のビジネスを実現していることの証拠と言えるでしょう。

*トヨタ自動車のHPより

「顧客第一主義」を掲げる企業は多いが……

今の業績だけでは分からない

トヨタに限らず大きな企業や勢いのある企業のHP(ホームページ)をのぞいてみれば、どの会社もいかに顧客を大事に考え、いかにしっかりした顧客サービスを提供しているかを、競うように掲げています。

しかし、会社が大きいからとか今の業績が良いからといってその会社が顧客第一主義であるというと、必ずしもそうではありません。とりわけ、最近の新興企業の中には、勢いもあり業績も大きいが顧客への配慮には疑問符が付くような事例も見受けられます。

例えば、ある携帯電話会社のHPにも、「お客さまの声プロジェクト」というタイトルで、顧客の声をサービスに生かす仕組みが紹介されています。

しかし、私の見る限り、この会社の顧客対応は残念この上ありません。例えば、携帯電話通話の契約をする際、家庭のインターネット回線とセットで申し込めば、月々の携帯電話料金を割り引くという制度をご多分に漏れずこの会社も提供しています。

このサービスに魅力を感じ、家族3人分の携帯電話契約を他社からこの会社に乗り換えると同時に、自宅のインターネット回線も同社のものに切り替え、セット割引を受けることにしました。

このとき、代理店窓口の説明では、自宅のインターネット回線の開設までは約2週間待ちということでした。ところが、1カ月経っても2カ月経っても開通せず、取り次ぎ代理店や携帯電話会社本体に問い合わせても「工事が遅れています。お待ちください」とただそれだけ。ネット回線が開通するまでは携帯電話料金のセット割引も受けられないという取り決めで、従来の携帯電話会社に比べて毎月の支払いがはね上がっていました。

結局、4カ月以上待っても開通せず、家族の不便を解消するためインターネット回線の契約を従来の会社に戻しました。契約時にあてにしていたネット回線と携帯電話とのセット割引は一度も適用されず、後で分かりましたが、同様の被害が各地で多数発生しており、悪評が渦巻いているとのことでした。

この会社は確かに業績もよく、今のところ順風満帆ですが、顧客をあざむくかのような取り扱いを各所で繰り返す今の体質を続ける限り、将来、時代の流れが変わった時に客離れは早いのではないでしょうか。

顧客の緊急時でもメール対応のみ

大手監査法人の子会社がベンチャー企業と大企業とのコラボを促進する目的で毎週行っているプレゼン企画があります。東京・新宿と大阪・梅田で行われています。

1回の会合で5社前後が自社サービスや商品を説明し、司会や参加者(=大企業の社員)から質問を受け付けるという流れです。その中で、旅行者の荷物預かりサービスを提供するベンチャー企業が、顧客からの問い合わせは電子メールでしか受けないとしており、このことに対して参加者から質問がありました。すると、その会社の経営者は「利用客はみなメールを使うと思いますので、メールだけで対応します」という趣旨の回答をしました。

いろんな種類のお店から荷物預かりの登録を受け、スマートホンなどでアクセスしてきた観光客と荷物預かり対応のお店をマッチングさせるビジネススタイルです。

旅行中のトラブルというのは、滞在期間が短いだけに緊急を要する案件が多いです。例えば、自分の荷物の中身の一部がなくなったというような場合はたいてい緊急事態です。この会社はそうした事態に保険で対処しているそうですが、旅行としては、責任者とのやり取りを済ませないと、先に進めません。そういう時に、メールという即答を必ずしも期待できないコミュニケーション・ツールでしか責任者とやり取りができないとすれば、かなり不便だなものになると思われます。

トラブルに電話対応をすれば時間と労力がかかり、ひいては人件費がかかります。この経営者が「今はまだ電話対応をできていませんが、将来は考えたい」とでも答えればまだ納得できたのですが、その回答からは顧客の困りごとへの誠意が十分に感じられず、残念に思いました。

IT技術が浸透する前から続く企業の多くは、長い社歴の中で電話での顧客対応も積み重ねてきましたし、顧客との骨の折れるやり取りの中で多くの事がらを学び、従業員も成長し、製品やサービスにも生かしてきました。しかし、IT社会で生まれ育った企業の中には、自社HPに電話連絡先を載せていなかったり、電話番号がどこに載っているのかなかなか分からないようなページを構築したりしています。

解約困難なサービスはびこる

別の事例です。年間5,000円で自社サーバーにグループ顧客の情報を預かり、グループメンバーの誰もがその情報を引き出せるようにするサービスを提供している外資系のあるIT会社。

このサービスを解約する際にHPを調べても解約手続きができません。カスタマー・サポートに電話しても、「ただいま電話が混み合っています。しばらく経ってからおかけください」とアナウンスして切れます。時間をおいて何度も電話しましたが、同じ結果です。最近の会社には同様の事例があまりに多く、電話対応に十分な人材を配置していないか、苦情があまりに多すぎるかのどちらかだと思われます。

そこで、仕方なく、同社のカスタマー・サポートに解約通知メールを送ったところ、返信メールで解約連絡先のメールアドレスが送られてきました。HPには、解約連絡先として電話番号(=何度電話しても人が出ない電話)しか載せていないのに、メールを送りつけてみると、「解約は以下のメールアドレスで受け付けることになりました」との返信でした。

それなら最初からHPに載せるべきではないでしょうか。解約窓口の電話番号だけを載せ、その番号にかけても滅多に人が出ないようにしておけば、顧客も面倒になり、ついもう1年契約を延長してしまうこともあるでしょう。しかし、このような対応は営利を追求するあまり顧客の都合を無視していると言わざるを得ず、大変残念に感じます。

この会社については、解約にまつわる苦情がネット上にも多く紹介されており、苦労したのは私だけではないようです。同じように解約困難な対応をしている企業がたくさん存在するのが昨今の状況です。

伝統企業にも「顧客そっちのけ主義」

お年寄りに高額の仕組債

伝統的な業界や企業の中にも顧客第一主義とは真逆を行くものがあります。例えば金融業界です。

証券会社や銀行などが手数料を増やしたいあまり、法人でも運用が難しいハイリスクの金融商品、例えば仕組債(投資信託など)を一般のお年寄りに大量に買わせた結果、仕組債の価値が暴落してお年寄りが老後の生活資金に困る――そういう事例が続発しており、かなり以前から各地の弁護士会の中に専門部会ができるなどの社会問題になっています。

2016年6月には、東京地裁がみずほ証券などに対し、不適切な勧誘で80代の認知症の女性にこうした金融商品を大量に購入させたとして、約3000万円の損害賠償を命じる判決を出しました。

判決によると、この女性は2008年、みずほ証券の担当者の勧誘で仕組債を計約7100万円分購入し、リーマン・ショックなどによって約4,000万円の損害を被りました。裁判長は判決で「購入した金融商品はリスクが大きく仕組みが難解であり、相当程度の投資判断の能力が要求されるものだった」と述べ、女性の認知症や投資経験の浅さも指摘して、「不適切な勧誘で、違法な取引にあたる」と判断しました。

認知症患者に限らず、お年寄りの仕組み債被害に対しては勧誘の違法性を指摘して金融会社に賠償を命じる判決が実はたくさんあります。専門の弁護士を知りたい場合は、弁護士会に問い合わせてみるのがよいでしょう。

「顧客目線を」と金融庁が指針

金融機関によるこうした「顧客そっちのけ主義」「営利第一主義」ともいうべき営業実態が有志の弁護士らの介在もあって社会問題化するにつれ、監督官庁の金融庁も対策に乗り出さざるを得ないほどでした。

2016年11月、金融庁は首相の諮問機関である金融審議会で、金融機関に対し顧客の利益を最優先した金融商品の販売や情報提供を促す行動指針案をまとめました。内容は、手数料の明確化などです。投資信託などの仕組み債には、手数料が明示されていないなどのケースも多いため、指針案は、顧客の支払いはどのようなサービスに対するものなのかが分かるようにするなどが柱です。

また、金融機関の従業員管理の適正化についても言及しました。手数料目当てに、同じ顧客に、金融商品を買っては売らせ、売ったらまた別の商品を買わせる、いわゆる「回転売買」をなくすために、従業員の評価方法を変えるように促しています。つまり、商品をどれだけ売ったかではなく、どれだけ顧客の残高を増やしたかを従業員評価の基準にするよう提案しているのです。

金融機関が果たしてどれだけ指針に従い、顧客第一主義に方向転換していけるのか、注目していきたいと思います。

「お宝保険」を解約させよ

仕組債よりもっと身近な生命保険についても「顧客そっちのけ主義」「営利第一主義」の実例が多くあります。

1999年以前に販売された終身保険や年金保険、養老保険、学資保険の多くは今の保険と比べて格段に高いリターンを契約者に約束しています。中でもバブル期に販売されたこれらの生命保険は特にリターンが大きく、「お宝保険」とか「プラチナ保険」と呼ばれていますが、あまり知られていません。これは、保険会社が当時の市場金利をもとに保険掛け金の運用収益を高く予測して設定した保険商品なので、一定期間かけ続けると、解約返礼金は支払った額より多くなります。

ところが、私が保険の営業マンから直接教わった話ですが、保険会社の方針でこうした「お宝保険」を解約させ、最近の保険に掛け替えさせる営業が長らく行われてきました。その結果、今や「お宝保険」の継続保持者は激減してしまったそうです。

お宝保険では、契約者が一定期間以上かけ続けると、支払い総額より多い解約返戻金を受け取れます。その場合、バブル期の金利を前提に運用収益を予測して作った保険商品なので、今の金利状況では、契約を履行すると保険会社にとって損になってしまいます。つまり、保険会社にとっては、出来れば解約させたい保険ということになります。

ところで、お宝保険は、一定期間が経過する前に解約すると、払い込み総額より少ない解約返礼金しか受け取れません。つまり、一定期間以上持ち続ければ支払総額より多くのお金が返ってきますが、それより前に解約すると、解約返礼金は激減し、支払い総額を下回ってしまします。保険営業マンは顧客に対してお宝保険のそういう仕組みを説明せず、当面の掛け金の大小や最新の保険のメリットだけを強調し、あたかも掛け替えた方が得であるかのように誤信させてお宝保険を解約させてきたのです。

実は私の妻もお宝保険を大手生保から途中解約させられそうになりましたが、手続き直前で私が解約返礼金について質問したところ、相手がしどろもどろになって回答し、掛け替えを勧める本当の理由に気付いて解約を免れたということがあります。

“お宝保険解約運動”が保険会社の大方針として営業現場で行われていることを保険営業マンから聞かされたのはそのずっと後のことですが、こうした経営姿勢が顧客第一主義からかけ離れていることは言うまでもありません。

「顧客そっちのけ主義」の元凶は?

詐欺まがいの約束で新規顧客を得る携帯電話会社、解約困難なIT関連会社、お年寄りから老後の資金を絞り取る金融会社、顧客を誤信させてお宝保険を解約させる保険会社。あきれる事例が並びました。しかし、これらはほんの氷山の一角で、世間には顧客第一主義をうたう企業は多いものの、消費者の立場からすれば、「顧客そっちのけ主義」「営利第一主義」を感じさせる企業が非常に多いのが現状です。

こうした会社がはびこるのは、世の中の風潮もあろうかとは思いますが、やはり個々の経営者の方針によるところも大きいと思います。

金融庁の金融審議会が金融機関向けに作成した顧客対応指針案でも指摘していますが、従業員が顧客の不利になる商売をするのは、そうすることで会社から評価してもらえ、会社内での自分の立場や待遇が良くなるからです。さらに言うと、顧客に寄り添うよりも自分と会社の利益だけを考える顧客対応や商売をして数字を稼いだ方が組織に評価されるからです。

ですから、経営者が顧客第一主義を本当に実現したいと思うなら、そういう目標を企業目標として社内に明示し、従業員の評価方法も変えていく必要があります。これは、会社が本当の意味で社会に貢献し顧客・消費者や社会から支持され、長期的に生き残っていくためには不可欠なことのような気がします。

社員に顧客第一主義を実践してもらうには

上の空のあいさつ

顧客第一主義について経営者や会社の姿勢と絡めて書いてきましたが、最後に、経営者だけでなく従業員一人一人の心がけについても触れておきたいと思います。冒頭でスターフライヤーやJALのCAさんたちの素晴らしい対応について紹介しましたが、この方々は、会社から受けた訓練や教育だけでなく、個々に培ったサービス精神を自身に身に付けておられるように感じました。

こういう顧客対応とは逆に、よく出くわすケースとして、店員さんから「ありがとうございました」「またどうぞお越し下さいませ」などと言われ、「(こちらこそ)ありがとうございました」と言い返そうと思って相手の顔を見ても、店員さんはこちらの顔を見ておらず、時には横を向いている場合さえあります。マニュアル通りに感謝の言葉を口には出しているのでしょうが、まったく心がこもっていない事例です。

良質の顧客対応をしてもらうには

従業員に心のこもった顧客対応をしてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。数年前、私は心のもてなしを重んじるコンサルタント会社社長に出会いました。企業研修を通じて従業員の人間力を高めることで売り上げアップを次々に実現させている女性でした。

この女性は「人は皆、本来素晴らしい存在だ」と説きます。それが様々な人生経験によって本来の輝きをなくしたまま仕事をしているのだと。こうした従業員らが元来持っている思いやりの心を思い出し、それを形にすることで周囲に元気や喜び、いやしを与えられるようにするのが、彼女の研修の目的です。

研修はあいさつの徹底から始まります。まなざしや口角、声色に気を付けて、心をこめてあいさつをします。自分から先に「おはようございます」とあいさつすること、何かしてもらったら「ありがとう」、悪いことをしたら「ごめんなさい」と素直に言うことなどを徹底します。これができないと、周りへの思いやりや感謝が薄れ、職場の生産性も下がりますが、心のこもったあいさつを続けると、心の扉が開き、その人本来の素晴らしさが開花していくのだそうです。

この女性はまた、「ほめる」「認める」「励ます」を重視します。物足りない水準であっても、従業員が達成した事柄を徹底してほめ、認め、励ますことで、やる気が高まり、次の段階に上がれるそうです。

こうした事柄を毎日実践することで一人一人が気付きや反省を重ね、感謝や思いやりの心が育ちます。そして、自分の気配りによって相手に喜びを与えられることを知り、客が喜ぶ仕事を心がけるようになれるといいます。

従業員の顧客対応を改善していくプログラムの一例を要点だけ紹介しました。他にも様々な手法があろうかと思いますが、経営者と従業員が自分本来の人間力を開花させ、一体となって顧客に寄り添い顧客の幸せを願う企業になれたなら、その会社にはきっと素晴らしい未来が広がっていくことと思います。