企業に企業理念が必要ですか?

企業理念とはそもそもなんでしょうか。
理念とは「考え方」「根本の考え」という意味があります。
企業理念とは、その会社の理念、つまり「考え方」を文字にあらわしたものです。
もっと言えば、何のために経営をするか、という大義名分です。
企業理念は全従業員が共通認識すべき「会社の存在理由」「会社の定義」とも言えるものです。

ですから、企業には企業理念は必要であるといえます。
それでは、企業理念が必要な理由とは何なのでしょうか。
今回は企業理念とは? を踏まえて、企業理念の必要性や唱和をする理由、企業理念の全従業員への理解について、お話しします。

企業理念ってなんですか?

企業理念、という言葉自体は、経営者・経営に携わられている方は誰もがご存知かと思います。
企業理念とは「企業の考え方」のことです。
もっと言えば、なぜその企業が存在するのか、何のために経営をするのか、という根本の考え方のことです。
たとえば京セラの経営理念は以下です。
「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」
一見するとかなりシンプルですが、この中には企業の方向性、従業員の行動規範、社風の良質化、社会への貢献などが含まれており、企業の成長性も示唆しています。
京セラの経営理念は、「会社経営するにあたり企業理念(経営理念)が思いつかないのであればまず手本にすべき経営理念」と言う人がいるほどです。
この経営理念には「心をベースに経営をする」とした創業者・稲盛和夫氏の精神が反映されているわけです。
(http://www.kyocera.co.jp/s/company/philosophy.html)

また、大手自動車メーカーの「トヨタ」を取り上げて見てみましょう。トヨタには企業理念が7つあります。

1.内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2.各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3.クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4.様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5.労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6.グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7.開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する

これは、トヨタグループの創始者である豊田佐吉の考え方を明文化したもの(「豊田要綱」と呼ばれています)をトヨタの経営の「核」にし、それを更に企業理念に落とし込んだものだそうです(トヨタ企業理念 http://www.toyota.co.jp/jpn/company/vision/philosophy/)。

企業理念とは、企業がどのような考え方で活動を行なっていくかの指針であり、同時に従業員がどのような気概を持って仕事に従事するかという指針にもなります。
他にも、企業のイメージを作るためや、企業アピールの側面もあると言えるでしょう。
外に対してはブランドイメージを植え付ける、内に対しては意識を統一する、という役割を担っていることも多いです。
また、理念からその企業の戦略や戦術が見えることもあります。

これらの企業理念を「経営理念」や「経営哲学」と表現する企業もあります。他にも「クレド」としている企業もあるでしょう。
「クレド」とはラテン語で信条を意味します。約束という意味で使われることもあり、会社の約束、つまり企業理念として使用されることも最近では多いでしょう。
他にも「ミッション&バリュー」「ビジョン」「カルチャー(スタンダード)」「企業使命」「経営姿勢」「行動指針」などの言葉で企業理念を表現する会社もあります。
また、「社是」や「社訓」を取り入れている企業もあるでしょう。
更には、企業理念と経営理念は別物として考える企業も存在することもあります。
企業理念は普遍的なもので、経営理念は時代の流れに合わせて変えていくべき、という考え方もできるわけです。
もちろん、企業理念は原則的には普遍なものではありますが、創業以来変えていない場合は時間の経過とともに考え方が古くなることもあります。そういった場合は企業理念を修正したり変更したりするようなこともあります。
今回は経営理念も含め、企業の考え方を明文化したものを全て「企業理念」とし、お話を進めます。

企業理念がある企業とない企業の違いは?

企業理念がある企業と、ない企業にはどのような違いがあるのでしょうか。
そもそも、企業理念がない企業というのはあるのでしょうか。
全国の1万社以上の中小企業に対して行われたアンケートでは、53%が企業理念(経営理念)があると答えています。また、その40%が創業時に企業理念(経営理念)を作ったとしています。
そう考えると企業理念のない企業も結構あるんだなと思われるかもしれません。
しかし、売上が高い企業ほど企業理念がある、という興味深いデータもあります。
つまり、売上と企業理念の有無が比例するというのです。
2.5億円までの売上があり、企業理念もある企業は47%なのに対して、売上が30億円以上あり企業理念もある企業は76%というデータがあるほどです。
ブランドイメージを持たせなければならない大手企業(上場企業)であれば企業理念(経営理念なども含みます)は必ずと言っていいほどあります。
企業のホームページなどでも確認することは可能でしょう。
しかし、中小企業や零細企業では、企業理念がないような企業もあります。
企業理念は先ほども言ったように、企業の考え方であり「企業の存在理由」です。
存在理由を文章化し、目に見える形にすることは非常に大切なことであるといえます。
ですから、企業理念は企業にとってあるべきものでしょう。
なんのために経営をしているのか、と聞くと、大半の方が「儲けるため」と答えるかもしれません。
確かに、「儲かっている企業」には企業理念は必要ないでしょう。明文化してなくとも、売上至上主義、がこの企業の企業理念であると言えます。しかし、儲かり続けるなどということはまずありません。いずれ失速した時に、慌てて企業理念を考えても浸透するわけがありません。
企業理念のある企業は、そのように失速したり、または売上が急に伸びた時に、あるいはトラブルに見舞われたりしたときに「ぶれ」を抑えることができるわけです。
とはいえ、企業理念があったところで形骸化し、経営者はともかく従業員も理解していない、というのでは意味がありません。
(データは http://www.foster1.com/article/13320762.html から引用)

毎朝、企業理念を唱和するのはなぜですか?

会社勤めを経験された方なら想像がつきやすいと思いますが、企業では朝礼の際に企業理念を唱和する、ということがあります。
唱和する理由は、声に出すことで企業理念を記憶させ、理解するためです。
マニュアルや契約書の読み合わせもそうですが、声に出すということは、言葉で記憶し理解する、という効果があります。
また、声に出すことで気持ちを切り替え仕事に集中できるようになる、大声で唱和することによりストレスの解消になる、気持ちの引き締めになる、という効果もあります。
例えばスポーツで、試合前にチームがスクラムを組んで声をかけ合い気持ちを高めることがありますが、朝礼における企業理念の唱和は、それにも似ています。
しかし、中には機械的に唱和している従業員、なぜ唱和する必要があるのかわからない従業員もいることでしょう。これでは、企業理念が形骸化してしまっている、と言えます。
棒読みで、なんとなく暗記をしてるだけで、本来の意味や創業者・経営者の考えにまで想いを馳せて、一言一句意味があるものだと考え、「腹に落ちる」ように唱和している人が果たして何人いるでしょうか。
特に企業理念は抽象的な表現のものが多いですから、字面だけをなんとなく覚えているだけということも少なくないでしょう。
とはいえ、経営者はもちろんのこと、従業員も企業理念が無駄だと思っているわけではありません。
従業員に「企業理念は浸透してるべきか」というアンケートをとったところ98%が、浸透しているべきと思う、またはやや思うと答えた、というデータがあります。
そう考えると、従業員は企業の理念浸透の必要性を強く感じていると言えます。
(アンケートデータは http://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=77 から引用)

企業理念は全従業員が理解していないといけないですか?

そもそも、企業理念を従業員に理解させる目的とは何でしょうか。
第一に「企業(経営)の方向性の明確化」が挙げられるでしょう。これは当然のことと言えます。
次に「従業員の行動規範」と「企業文化や社風の良質化」が挙げられます。
他に、「社員の一体感を醸成させるため」「企業の社会的責任意識をあげるため」「モチベーションの維持のため」などが挙げられますが、多くを占めるのは最初の3点でしょう。
当然ですが同じ組織に属する限りは同じ方向を向いていなければ経営も企業も成り立ちません。
また、従業員が不正とまではいかなくても仕事の手を抜いたり、それが当たり前の社風となってしまえば売上の下落にもつながります。
「経営理念を確立して浸透させれば、その事業は半分成功したものと同じ」とはパナソニックを一代で築き上げた実業家・松下幸之助の言葉ですが、経営理念がいくら優れていても、末端まで血が通っていなければ意味はなく、全従業員にいかに理解されて浸透しているかがポイントになってくるのです。
企業理念は内側にとっては「意識を統一するためのもの」です。
たとえば仕事をしている中で迷いが出た時、判断に困った時に、企業理念に沿って仕事を進めていくのが本来のあり方です。
仕事に対する考え方の芯の部分が「ぶれ」ないようにする、いわば羅針盤になるものが「企業理念」なのです。
同時に、経営者や上に立つ者は従業員や部下を教育・指導し、導いて行く立場として、組織の方向性をわかっていなければなりません。
「ぶれ」のある教育・指導をしてしまうと、従業員が困惑してしまうからです。
そういう意味でも、企業理念は全従業員の誰もが、理解しておかなければならないことなのです。

まとめ

企業理念とは、会社の存在理由を明文化し、何のために経営をするかという「企業の考え方」を文字にしたものです。
経営方針、方向性はもちろんのこと、社員の行動規範や社風の良質化を図るための文言が含まれていることが多く、外に対してはブランドイメージをつけるため、内に対しては意識を統一するために作成されていることが多いでしょう。
企業理念のない会社も実際には多く存在しますが、企業理念は会社の根幹とも言える考え方になりますから、「ぶれ」を抑えるためにも企業理念はある方がいいでしょう。
また、企業理念は組織の存在理由ですから、全従業員が認識し、全従業員に浸透しているのがベストです。
そのための研修や朝礼での唱和などを使い、全従業員に企業理念を理解・認識してもらうことが大切です。