顧客ロイヤルティって何ですか?

「顧客ロイヤルティ(ロイヤリティ)」とは、顧客が商品・サービス、ブランドに対して感じる信頼や愛着、親近感などを指します。商品やサービスには満足でも、サポート体制に不満があったり、購入プロセスが面倒だったりすると、顧客は継続的には商品を購入しません。

1回だけの顧客満足だけではなく、継続的に信頼や愛着を持っている「顧客ロイヤリティの高い状態」が重視される所以です。

ある調査によると、顧客ロイヤリティの高い人ほど購入を継続する意向が高く、年間の購入回数や購入金額も高い傾向が確認できています。

顧客ロイヤルティを高めるために最も大事なことは、顧客の声に耳を傾けることです。その上で、カスタマー・サービスを充実させたり、SNSを活用したり、One to One施策でもてなしたり、カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を改善したりします。ここでは、そうした手法について紹介します。

「ロイヤルティ」とは忠誠心を表す「Loyalty」からきており、企業やその企業の商品・サービスに対する信頼や愛着の大小を「ロイヤルティが高い(低い)」と表現します。ロイヤルティが高い顧客は、自らが商品等を継続的に購入してくれるだけではなく、その商品等を友人・知人に勧めてくれることが多く、集客を後押しする「ロイヤルカスタマー」となります。

1980年ごろから顧客満足(Customer Satisfaction)という概念が広まりました。売上や購入額だけではなく、商品・サービスに対する顧客の満足度を重視する企業が増え、多くの企業で顧客アンケートや顧客満足度調査を実施しています。

しかし、顧客満足度調査の普及に伴い、商品・サービスへの満足感だけでは必ずしも商品等を頻繁に購入するわけではないということが明らかになってきました。商品・サービスには満足でも、サポートに不満があったり、購入プロセスが面倒だったりすると、顧客は継続的には商品等を購入しません。そのため、1回の購入・使用経験ではなく、長期的に信頼や愛着を持つ状態になっているかどうかを判断する「顧客ロイヤルティ」という概念が生まれました。

顧客ロイヤルティには「心理ロイヤルティ」と「行動ロイヤルティ」があります。「心理ロイヤルティ」とは、ある商品・サービス、ブランドに対し信頼や愛着などの好意的な感情を抱いている状態のことです。そして、「行動ロイヤルティ」とは、次のような具体的な行動を取っている状態です。心理ロイヤルティが高まると行動ロイヤルティが高まるという原因と結果の関係があります。

【行動ロイヤルティ】
・ある企業の商品・サービスを継続的に購入する。
・競合する商品・サービスに切り替えることをためらう。
・フェイスブック等で「いいね」やコメントをする。
・友人・知人にその企業の商品・サービスの購入を勧める。

野村総合研究所が2007年に行った携帯電話機メーカーの切り替えに関する調査では、「他人への推奨」が顧客ロイヤリティに最も関係しているというという結論が出ました。

顧客ロイヤルティを測る指標はありますか?

顧客ロイヤルティを測るグローバルな指標はNPS(Net Promoter Score)です。この指標は2003年に米国の大手コンサルティング会社「ベイン・アンド・カンパニー」のフレドリック・F・ライクヘルド氏が発表し、GEやアップルなど様々な有名企業がその有効性を証明したことで、広く普及しました。現在、NPSは欧米の売上上位企業(フォーチュン500)の3分の1以上に活用されているそうです。

NPSをはかるには、まず「あなたがこの企業(商品・サービス、ブランド)を友人・知人に勧める可能性はどのくらいありますか?」と質問し、0~10の11段階で評価をしてもらいます。そして、回答をもとに顧客を次の3タイプに分類します。

①推奨者(Promoter)……9、10と答えた人。ロイヤルティが高い顧客で、自分が継続購入するだけではなく、他者へ勧める伝道師的な役割も担います。 ②中立者(Passive)……7、8と答えた人。商品・サービスに満足はしていますが、それほど強い愛着はなく、周囲に勧めることもなければ悪口を言うこともありません。何かのきっかけで競合商品に移りやすい人たちです。
③批判者(Detractor)……0~6と答えた人。放置しておくと、商品・サービスの悪評を広める恐れもあります。

※出典 http://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

次に、「推奨者」の割合(%)から「批判者」の割合(%)を引くとNPSのスコアが出ます。

※出典 http://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

「0~6」の批判者しかいない場合のNPSは-100、「9~10」推奨者しかいない場合は100となります。批判者と推奨者が同数の場合は、NPSはゼロです。100人の回答のうちの推奨者が40人で批判者が50人だった場合、NPSは40-50で「-10」となります。400人以上の回答者がいると、誤差が±5%となり、調査結果の信頼性が高いと言われ、誤差を±2%に抑えたい場合は、2000サンプル以上が必要とされています。

顧客ロイヤルティを高めるメリット

NPS調査の実例を見てみましょう。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション社は2016年、百貨店10社についてインターネットでNPS調査を行いました。3086人の有効回答があり、最もNPSが高かったのは阪急百貨店(-16.1ポイント)で、最下位企業と33.9ポイントの差がありました。

また、同じ阪急百貨店でも、大阪府在住者のNPSは0ポイントと高く、兵庫県では-8.7ポイント、その他の都道府県平均では-27.0ポイントとなり、地域によってばらつきがありました。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション社は、同年に行ったNPSベンチマーク調査をもとに各業界のリーダー(スコアが高い企業)や業界平均値などを下記のようにまとめています。

業界 業界リーダー NPS 業界平均NPS
生命保険業界 ソニー生命保険株式会社 -38.9ポイント -53.4ポイント
クレジットカード業界 ビューカード -16.0ポイント -42.3ポイント
自動車保険業界 ソニー損害保険株式会社 -26.2ポイント -42.8ポイント
通販化粧品・健康食品業界 オルビス -14.7ポイント -31.3ポイント
百貨店業界 阪急百貨店 -16.1ポイント -32.8ポイント
スマートフォン業界 iPhone -3.1ポイント -42.5ポイント
インターネット・サービス
・プロバイダ業界
eo光 -31.4ポイント -53.5ポイント
ECサイト Amazon.co.jp -9.2ポイント -27.9ポイント
シティホテル ザ・リッツ・カールトン 12.2ポイント -8.6ポイント
トラベル業界 阪急交通社 -7.8ポイント -18.9ポイント
航空業界 ANA -9.1ポイント -20.0ポイント

※出典 http://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

これらの調査では、推奨度が高い人ほど商品・サービスを継続購入する意向も高く、年間の購入回数や購入金額も高いという傾向が確認されました。例えば、生命保険業界への調査では、「推奨者」(NPSで推奨度として9~10をつけた人)は過去12カ月で平均1.5人に対してポジティブな口コミをしていました。一方、「批判者」(NPSで推奨度として0~6をつけた人)は同じ期間に平均0.2人に対してポジティブな口コミをしただけでした。また、NPSの高い保険会社ほど保有契約高の伸び(前年からの成長率)が高いという傾向がみられたそうです。

Emotion Tech社がNPSと組み合わせて行った調査でも次のようなことが分かりました。
・ECサイト(ネット上の販売サイト)の年間平均利用回数……推奨者は17回近いのに対し、批判者は9回程度(2015年調査、614件対象)。
・ある衣料ブランド……推奨者の1回の購買額は批判者の1.3倍(2016年調査、562件対象)。
・あるスポーツメーカー……推奨者の85%が実際に商品を他人に勧めたことがあった(2015年調査、216件対象)。

商品・サービスやサポートなどに顧客が満足することで顧客ロイヤルティが高まります。すると、継続して商品・サービスを購入し、友人・知人にも購入を勧めてくれるようになります。「20%の優良顧客が売上全体の80%を担う」という説もあり、顧客ロイヤルティを高めて優良顧客を増やすことで、顧客にも喜ばれ、企業にも大きな利益がもたらされます。また、「企業の売上の65%は既存顧客がもたらし、1人の新規顧客を獲得するコストは1人の既存顧客をつなぎとめるコストの5倍かかる」という有名な説もあり、既存顧客の満足度を高めることは業務効率を上げる意味でも重要です。

顧客ロイヤルティを高める方法は?

顧客ロイヤルティを高める方法をいくつか紹介しましょう。

(1)基本:顧客の声に耳を傾ける
顧客ロイヤルティを高める方法はたくさん提唱されていますが、最も重要なポイントは、顧客目線を見失わないことです。

思い込みや憶測をもとに商品やサービスを開発・販売するよりも、顧客へのマーケティング調査に基づいて顧客ニーズに合った商品・サービスを追求する方が、顧客から支持される確率が高くなります。こういう商品を売りたい、こういう商品が売れるはずだという、企業側の都合や固定観念に基づいて商売をするのではなく、顧客が求める商品・サービスやサポートを、顧客の声に耳を傾けながら顧客目線で考えて提供することで、顧客ロイヤルティが上がります。

そのためには、マーケティング調査で消費者ニーズを分析することも有効ですし、実際に商品・サービスを購入してくれた顧客の声を集めてしっかり受け止め、今後に反映させることも大切です。

顧客が何に満足し、どんな点に不満を抱いているのか、何を求めているのか――などを知ることで、改善点が見えてきます。

(2)心理ロイヤルティを重視
購入額などに応じてポイントを付与する「ポイントプログラム」や割引クーポンの提供、友人・知人を紹介してくれたら見返りを提供するといったシステムは、顧客の購入を促進し「行動ロイヤルティ」を直接高めます。

しかし、こうした手法で引き出した「行動ロイヤルティ」は脆弱で、競合他社が同じようなインセンティブを提示すると、そちらに流れる可能性が多分にあります。インセンティブが同じなら、消費者はより好きなブランドを選ぶのです。

そこで、「見せかけの行動ロイヤルティ」を一時的に高めるよりも根底の「心理ロイヤルティ」を高めることを重視しなければなりません。「心理ロイヤルティ」とは、商品・サービス、ブランドに対し信頼や愛着などの好意的な感情を抱いている状態のことで、「心理ロイヤルティ」が高まると、継続購入や周囲への推奨など「行動ロイヤルティ」が高まるという原因・結果の関係があります。

(3)カスタマー・サービスは重要
顧客と企業の接点には、販売現場以外に電話やWebサイト、電子メールでの問い合わせに加え、最近では FacebookやTwitterなどSNS(Social Networking Service)もあります。このように顧客と企業をつなぐツールの増加により、「返品したいのですぐに対応してほしい」「問い合わせたがすぐに返事がこない」など、顧客が企業に要求するスピードも速くなっています。対応の遅れは顧客満足の低下につながり、顧客ロイヤルティを失う要因になります。

また、苦情などへの対応が悪いと、インターネット上で拡散され、企業や商品等のイメージに大きなダメージを受けたり、対処のための多大な時間・労力を強いられたりすることもあります。その場合、顧客ロイヤルティも下がります。ちなみに、Echo Research社の調査では、55%の人が「商取引または購入をしたいと思っていたにもかかわらず、カスタマー・サービスの対応が悪くて取りやめた経験がある」と回答しています。

(4)SNSの活用
FacebookやTwitterなどのSNSで一方的に情報を配信するだけでは顧客は離れてしまいます。SNSは顧客が率直な意見を気軽に言えるメディアとして価値があり、企業にとっては、自社の商品・サービスやアフターサポートなどに対する顧客の本音や細かいニーズを知ることが出来る貴重なツールです。

また、顧客の声に迅速・的確に返信するなど適切なコミュニケーションを心がけることで、顧客と良好な関係を構築し維持する手段にもなります。さらに、顧客の声を社内にフィードバックすることで社員のモチベーションを上げる効果もあると言われています。

(5)One to One施策でおもてなし
一人ひとりの好みやニーズに合わせてパーソナライズされたOne to Oneサービスを提供している企業もあります。

リッツ・カールトン・ホテルは接客から得た顧客情報を細かく記録し、顧客が再び宿泊する際は、好みに応じた新聞や寝具などを準備して迎えるそうです。もっと庶民的な例では、「いつものやつ」で好みの酒や料理を好きな焼き具合で出してくれるような飲食店と何度通っても「その他大勢」と同じ扱いしかしてくれない飲食店とでは、顧客は当然ながら「いつものやつ」で通るお店にロイヤルティを感じます。

お店が自分のことを分かり、自分が喜ぶように考えてサービスをしてくれるからであり、自分が感謝され大切にされていると感じるからです。お得意様の個々に応じた特別なおもてなし(One to One施策)を提供することで、顧客ロイヤルティが高まります。

(6)ロイヤルティ・プログラムで特別な体験
ロイヤルティ・プログラムとは、得意客に特別なサービスを行う施策です。細かい顧客データを把握できていれば、誕生日に特別な商品・サービスを提案・提供したり、結婚記念日にお祝いや特典を贈ったりするなど、顧客の個々のタイミングに応じて特別なサービスを提供することができます。また、限定された顧客に特別な体験をプレゼントするという方法もあります。

(7)カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)の改善
カスタマー・エクスペリエンス(Customer Experience)とは、顧客が商品・サービス、ブランドと接触する一連の体験のことです。商品・サービスを実際に利用する場面だけではなく、店頭での接客やCM・ウェブサイト・SNSなどから受ける印象に加え、アフターサポートなど、様々な顧客接点を含みます。

顧客ロイヤルティを高めるには、これらの様々な顧客接点のうちどの顧客接点を改善することが重要なのかを見極める必要があります。それには、消費者(実際の購入者と潜在顧客)の声をマーケティング調査や顧客アンケート、顧客相談窓口などを通じて集約し、分析することが前提となります。こうしてカスタマー・エクスペリエンスを改善すると、顧客ロイヤルティも高まります。

まとめ

顧客が商品・サービス、ブランドに対して感じる信頼や愛着などを指す「顧客ロイヤルティ」の指標が欧米の著名企業の多くに活用され、日本でも広がっています。

顧客は、商品等に満足しているだけでは必ずしも継続購入をするわけではなく、サポート体制に不満があったり、購入プロセスが面倒だったりすると、他に流れます。

そのため、長期的に信頼や愛着を持つ状態になっているかどうかを判断する「顧客ロイヤルティ」の概念が重視されています。ロイヤルティの高い顧客ほど商品・サービスを継続購入する意向が高く、年間の購入回数や購入金額も高いという傾向があるということが、近年の調査で公表されています。「20%の優良顧客が売上全体の80%を担う」という説もあり、顧客ロイヤルティを高めて優良顧客を増やすことは業務効率を高める上で必須と言えます。

顧客ロイヤルティを高めるために最も大事なことは顧客の声に耳を傾けることです。顧客が求める商品・サービスやサポートを、実際に顧客の声に耳を傾けながら顧客目線で考えて提供します。

顧客が何に満足し、どこに不満を持ち、何を求めているのかを積極的に把握し、改善につなげる姿勢が大事です。また、カスタマー・サービスを適切に行って顧客の不満を防止し、SNSで顧客とのコミュニケーションや顧客ニーズに関する情報収集を補完することも有効です。得意客に対しては、個々に応じた特別なもてなし(One to One施策)を提供することで感謝の意を伝えるという手法もあります。こうして顧客ロイヤルティを高めることで、顧客も喜び、企業も利益を維持・拡大できるのです。