企業スローガン(経営スローガン)が必要な理由

企業スローガンとは?

企業の「理念」「ビジョン」「ミッション」などをひと言で表し、消費者や従業員などにイメージさせる印象的なフレーズのことを「企業スローガン」といいます。「短い言葉でその企業の内実が理解できるようなもの」「企業理念をイメージ化したもの」が望ましく、企業イメージを伝えるキャッチコピーやキャッチフレーズと言えます。

優れた企業スローガンをつくるには、まず自社についてよく知ることが大事です。そして、自社のどういうところをどういう人に向けて伝えるのかを考えます。つまり、「伝えるべき長所や目標など」と「伝える相手(ターゲット)」を明確にします。

そのうえで、分かりやすく覚えやすいフレーズで表現します。企業スローガンは「企業が消費者や従業員などに伝えたいメッセージ」を直感的に伝える言葉であり、大きな広告費をかけられない中小企業にとっても、優れた企業スローガンをつくることが出来れば、ひとつの有効な「広告」になります。

企業スローガンの役割

企業のスローガンはロゴマークと一緒に用いられることも多く、ロゴは企業やブランドを視覚的にイメージし、スローガンは言語で表現します。スローガンやロゴマークを示すことで、社名やブランド名だけを表示する場合より受け手の興味をひきやすくなり、企業やブランドへの理解や記憶を促進します。スローガンやロゴマークを使うことでイメージや理念を受け手により印象的に伝え、記憶にとどめることが出来るのです。

企業スローガンの作り方

それでは、どうしたら魅力的な企業スローガンをつくれるのでしょうか。ポイントをまとめてみました。

①自社を深く理解する
まず、最も必要なことは「自社のことを深く知る」ということです。コピーライターの世界では、魅力的なキャッチコピーをつくるために必要な要素は次の3つだとされています。

  1.商品への理解=50%
  2.常識=30%
  3.クリエイティビティ=20%

そこで、商品のキャッチコピーではなく企業のスローガンをつくる場合、自社のことを深く理解することが、すぐれたスローガン(キャッチコピー)をつくるための第一歩となります。

②ターゲットを決める
次にスローガンのターゲットを明確にします。スローガンをどんな人たちに向けて発信したいのかを定めるのです。 例えば、ターゲットが消費者であれば、「どういう企業なのか」「何を売っているのか」「どんな仕事をしているのか」などをスローガンに盛り込みます。

また、ターゲットが自社の従業員であれば、「どのような会社でありたいのか」「何を目指すのか」「どのような商品やサービスを提供したいのか」など企業の理念や目標などを表現します。このように、誰をターゲットにするかによってスローガンの内容も変わってきます。

③何を伝えるか
スローガンには企業の魅力や理念を込めることが大切です。 スローガンを見聞きするだけで、それまでその会社を知らなかった人にでもどういう会社なのかすぐにイメージできるようなスローガンが理想です。

そのためにも、自社がどのような会社なのか、どういう長所があるのか、あるいはどのような会社でありたいのか、それをだれに伝えるのか――を明確にしておく必要があります。

その際、スローガンを伝える相手(ターゲット)に「共感」や「親近感」を抱かせることが大事です。どんな人たちに、自社のどういった点に共感を覚えてもらいたいのかを明確にすることで、スローガンの内容が絞り込まれていきます。

④分かりやすく
あまり有名でない会社や小さな会社にとって、企業スローガンの重要な要素は「分かりやすさ」です。パナソニックの“ideas for life”というかつてのスローガンには「お客様の暮らし(life)のために」という創業者の思いが込められ、“ideas”には、ギリシャ語の語源に近い概念、フィロソフィといった深い意味も込められていました。

つまり、このスローガンにはパナソニックの経営理念の大事な部分が凝縮されていたのですが、消費者の頭の中でこのスローガンとパナソニックの会社名が結びついたのは、多額の広告宣伝費をかけてCMなどを流し、広範に繰り返し発信したためだと言えます。

多額の宣伝広告費を負担できない小さな会社がこのような洒落たスローガンをつくっても、多くの消費者にとってスローガンと会社名が結びつかないため、効果が限定されます。そこで、多くの会社のスローガンに求められるのは、「何をしている会社なのか」「どんな理念を持っているのか」などが分かりやすく手短に伝わることです。受け手がその意味を瞬時に理解でき、しかも覚えやすいスローガンであれば、広告として非常に有効です。

企業スローガンの例

有名企業のスローガンを二つ紹介します。

・トヨタ……Drive your dreams
トヨタのかつての企業スローガンです。Driveとdreamsが同じDで始まって韻を含んでおり、リズムよく響きます。直訳すれば、「夢を運転する」ですが、「車をドライブして夢をかなえる」「夢の実現を加速させる」といった意味もかけられているとのことです。価値創造のプロフェッショナルたちが、それぞれの持ち場、立場で先人に負けない夢を抱き、その夢の実現に向けて邁進するという願いが込められているそうです。

・Apple……Think different
アップルが1997年に発表した有名なスローガンです。「違うことを考えよう」という意味ですが、iPhoneやiPadなど、品質の優れた人気商品を輩出してきたアップルらしく、他社が追いつけないような高品質の商品を提供していこうという姿勢が反映されています。

また、シンプルなデザインが特徴的なアップルにふさわしく、シンプルで分かりやすいスローガンです。このスローガンは、当時のCMで「自分が世界を変えられると本気で信じる人達こそが、本当に世界を変えているのだから」というメッセージとともに流されました。

中小企業にも粋なスローガンがあります。

・愛媛信用金庫……「愛」ある街のホームドクター 愛媛信用金庫

・小松電子……Small But Excellent (小さくとも、一流を目指す)

ところで、京セラは「ブランドステートメント」として“The New Value Frontier”を掲げています。「新たな価値をいつも最先端で創造し続ける」という京セラの意志を強く世の中に宣言する言葉です。京セラは「京セラはグループの総合力を発揮し、時代や市場が求める価値を独自の技術と視点で切り拓きカタチにします」と宣言し、

「人類、社会の進歩発展のために独創性と質の高さで新たな価値を創造し続けます」

「そのために ものごとの本質を問い、質の向上を追求して、時代や市場が求める価値を独自の技術と視点で切り拓きカタチにします」

「そして 個々の事業展開においては『顧客の期待を超える価値の創造』を信条に、『「感動と喜びを与えるパフォーマンス(技術力、品質、対応力)』を約束し、”Value Frontier”として、グローバルで価値づけられるブランドとなることを目指します」

と説明しています。単なる利益至上主義ではなく、社会的価値を実現しながら利益も増やしていくという、創業者である稲盛和夫さんの経営倫理が反映され、「京セラは何を目指すのか」を社会に向けて発信するとともに、企業が目指す方向性を従業員にも示す内容となっています。

スローガンの浸透のさせ方

webサイトやポスターなどで使う

企業スローガンを消費者に浸透させるには、CMが使えない場合でも、インターネットの自社サイトやポスター、自社封筒、チラシ、パンフレットなどいろいろな「媒体」に使用していくことが大切です。多額の広告宣伝費がなくても、身近に使える様々な手段を最大限に使うことで徐々に広まっていきます。また、内容が分かりやすく印象的であれば、受け手に覚えてもらいやすく、浸透のスピードが速くなることでしょう。

社会貢献を含ませる

消費者など社外の人をターゲットにする場合も、従業員をターゲットにする場合も、社会貢献につながる内容を企業スローガンに盛り込むと、浸透しやすいと言われています。 自社製品のアピールに特化するなど売上増だけを狙ったスローガンだと、対象となる消費者以外にはあまり興味を持たれない可能性があります。

しかし、社会貢献を盛り込むと普遍性が加わり、興味を持ってくれる層も広がる可能性があります。また、従業員にとっても、自社の利益追求だけのスローガンよりも、社会貢献を思わせる内容やフレーズが入っていると、社会貢献の意味も込めて働くことができ、モチベーションが高まります。

まとめ

企業の「理念」や「ビジョン」などを短く表現し、消費者や従業員などに良いイメージを想起させるフレーズを「企業スローガン」といいます。企業イメージを伝えるキャッチコピーやキャッチフレーズであり、「何をしている会社なのか」「どんな理念を持っているのか」などが分かりやすく手短に伝わることが大切です。そして、受け手が意味をすぐに理解でき、しかも覚えやすいスローガンであれば、広告として有効です。

優れた企業スローガンをつくるには、①自社を深く理解する②ターゲットを決める③何を伝えるかを絞る(企業の魅力や理念を込める)④分かりやすく表現する--といった手順が必要です。まず自社についてよく知り、自社がどのような会社なのか、どういう長所があるのか、あるいはどのような会社でありたいのか、それをだれに伝えたいのか、などを明確にしていかなければなりません。こうしてつくられた企業スローガンは「企業が消費者や従業員などに伝えたいメッセージ」を直感的・印象的に伝える言葉であり、有効な広告として機能してくれる可能性があります。