経営ビジョンがある会社とない会社の違いは?

経営ビジョンとは何ですか?

「経営理念」が哲学的な内実を伴うとすれば、「経営ビジョン」は、企業が目指す将来像を視覚化したイメージです。

経営理念や経営ビジョンは「経営戦略」の前提となり、経営理念や経営ビジョンを通じて経営スタンスを明確にすることが、成長過程で組織の求心力を保つために役立ちます。

登山を例にとると、どの山に登るかを決めることが「ビジネス・ドメイン」の選定です。自分たちがどの分野で企業活動を行うのかを決めるのです。そして、目指す山の頂上から見える景色が「経営ビジョン」です。「こんな景色を見るために頑張ろう」と意識を一つにし、みんなで山の頂上を目指して登っていくのです。

企業活動を進める上で理想とする到達点であり、夢とも言えるでしょう。ビジョンがある会社では、従業員たちが自分たちの未来についてしっかりしたイメージを持ち、一つの方向に向かって進んでいくことができます。企業が成長していくためには、企業規模にかかわりなくどんな企業にも経営ビジョンの設計・提示が有効です。

経営理念との違いは?

「経営理念」は、企業の存在意義や大事にする価値観、経営姿勢、社会的責任(社会的使命)などを内外に示すものであり、創業者・経営者の強い思いが込められています。経営理念は企業の心棒であり、「この会社はどんな社会的役割を果たしているのか、どんな点で社会になくてはならないのか」などを文章で表したものです。

これに対し、「経営ビジョン」は経営理念を実現するために描く企業の将来像です。経営理念に沿って、将来の目指す姿を定め、従業員や顧客、株主、社会などに示すものが経営ビジョンです。

経営ビジョンも経営理念と同様、企業の内外の利害関係者に向かって経営者が発信する情報の一つであり、自分達が目指す将来像を伝えるものです。中小企業の場合、主に従業員を意識して経営ビジョンを設計する場合もあります。

どのようなビジョンが望ましいですか?

経営ビジョンは経営者の「夢」にあたるものです。
ですから、経営者にとっても、ビジョンを共有する従業員にとっても、「ワクワク」するものが望ましいでしょう。

経営ビジョンには、従業員に対し「一緒に山に登って頂上にたどり着き、こんな景色を見よう」と呼びかける意味もありますが、できるだけ魅力的な景色を目指す方が、従業員の意識が高揚します。

また、経営理念が哲学的・論理的なものとすれば、それを受けて当面の将来像として設計する経営ビジョンは、感情に訴えかける点で経営理念を補完するものと言えます。人はどちらかというと、論理よりも「ワクワク」「ウキウキ」といった感情で動きます。感情に訴えかけて従業員や関係者を動かすようなビジョンが効果的です。

経営ビジョンの具体例

経営ビジョンの種類として多いのは「社会貢献」「顧客第一」「業界のリーディングカンパニーになる」などの目標を掲げたものです。それでは、有名企業のホームページ(HP)から各社の経営ビジョンを拾ってみましょう。

◇ソニー/ビジョン

テクノロジー・コンテンツ・サービスへの飽くなき情熱で、ソニーだからできる新たな「感動」の開拓者になる。

◇高島屋/ビジョン(指針)

・こころに残るおもてなし
・未来を切り拓く新たな生活・文化の創造
・いきいきとした地域社会づくりへの貢献
・地球環境を守るためのたゆまぬ努力
・社会から信頼される行動

◇ダイソー/ビジョン(行動指針)

1. 法令と社会規範を遵守し、公正・健全な企業活動を行います
2. 研究開発を推進し、高品質・高信頼性の製品を提供します
3. 地球環境の保全に努め、安全で健康的な生活空間の実現をめざします
4. 互いの人権・個性・価値観を尊重し、良好な職場環境を作ります
5. 会社の諸規定を遵守し、ステークホルダーへ適正な開示を行います

◇アスクル/ビジョン(マインド、価値観)

お客様に、社会に、働く仲間に、再考のHAPPY(価値)を。

◇マツダ/コーポレートビジョン

私たちはクルマをこよなく愛しています。
人々と共に、クルマを通じて豊かな人生を過ごしていきたい。
未来においても地球や社会とクルマが共存している姿を思い描き、
どんな困難にも独創的な発想で挑戦し続けています。
1. カーライフを通じて人生の輝きを人々に提供します。
2. 地球や社会と永続的に共存するクルマをより多くの人々に提供します。
3. 挑戦することを真剣に楽しみ、独創的な“道(どう)”を極め続けます。

◇京セラグループ/環境ビジョン2020

京セラグループは、グローバルな環境マネジメント体制「グリーンマネジメント」を基盤に、「グリーンプロダクツ」「グリーンファクトリー」「グリーンコミュニケーション」の3つの領域で、エコロジー(環境性)とエコノミー(経済性)の両立を追求しながら、共生(LIVING TOGETHER)をすべての企業活動の基本に置き、持続的な発展をめざす「環境経営」に取り組みます。

1. 低炭素社会への貢献
創エネによる温室効果ガス削減貢献量の極大化と、事業活動における温室効果ガス排出量の抑制により、低炭素社会貢献ファクター3(貢献量/排出量)をめざします。

2. 循環型社会への貢献
新規資源投入量の抑制と、廃棄物排出量の極小化により、持続可能な資源循環型社会への貢献を果たします。

3. 自然共生社会への貢献
(1)自然環境への負荷極小化と、自然環境を守り育てることにより、生物多様性保全の促進に努めます。
(2)さまざまなステークホルダーとの環境コミュニケーションや環境啓発活動を通じて、環境マインドを持った社会の醸成に貢献します。

→→夢あふれるビジョンや理念的なものなど様々です。いずれにしろ、成長企業の多くが経営ビジョンを持っており、ある調査では、5年間連続で営業利益の10%増を超えた上場37社のうち33社がHP上で経営ビジョンを公表していたそうです。

まとめ

経営ビジョンは経営理念を受けて企業の将来像を視覚化したもので、経営理念とともに企業の経営スタンスを明確にします。

経営理念と経営ビジョンは経営戦略の前提となり、組織が目標に向かって進んでいく際の求心力として機能します。

従業員たちは経営ビジョンによって会社の将来について具体的なイメージを共有し、同じ方向に向かって進んでいくことができます。経営ビジョンも経営理念と同様、企業の内外の利害関係者に向かって発信する情報の一つであり、企業活動における価値判断の基準となります。

企業が成長していくためには、経営ビジョンが欠かせません。